これは、「闘いは独りでやれ」に通じるものがあります。

あなたと会社が争っていることについては、あまり他の社員に知られないようにしたほうが賢いです。後々の交渉がやりやすくなります。

そうはいっても、やがてなんとなく知られるものではありますが、詳細な情報は与えない方が都合がいいのです。

 

他の社員は、自分では危険を冒さず、あわよくばあなたが戦った成果だけを共有したいと思っています。

例えば、みんながサービス残業しているような職場で、あなたが独り、会社に抗議したとします。

周囲の社員は、自分は矢面に立つことなく、時間外手当を遡って貰えるという果実だけをちゃっかり貰いたいのです。

ですから、興味津々でいろいろ聞いてくるかも知れませんが、適当にはぐらかして、詳しい話をしないようにしましょう。

あるいは、

「会社は折れる気は全くない」

「自分と、自分に同調する社員は首を切ってもいいと言われた」

とでも言っておけば、同類に見られては大変と、向こうが慌てて離れるでしょう。

 

会社としても、あなただけに不払い残業代を払うのと、他の社員にも払うのでは、経済的負担が全く違います。

周囲が詳しい状況を知らなければ、会社との取引により、「表向きにはあなたが交渉に負けたことにして、秘密にすることを条件に支払いを受ける」というような解決方法もとり得るのですが、あなたと会社の争いの詳細まで周囲に知れわたっているような状況だと、そうもいきません。

それから、ワンマン経営者というのは、無駄にプライドが高いのです。創業社長などであれば、自分の才覚でそこまで会社を大きくしてきたという自負がありますからやむを得ぬことかも知れませんが、会社内のことに関する限り、自分が法律であり、自分が何でも決めて良い、周囲は言うことを聞くのが当然という考えでいます。

そういう社長は、「たかが従業員」に負けるということを、絶対に認めたくないのです。社長である自分がただの従業員に負けたことが、他の従業員に知れ渡るのは耐えられないほどの屈辱なのです。

ですから、他の職員が会社とあなたとの争いの内容を知っていればいるほど、理屈で考えれば和解した方が傷が浅い場合でも、感情的になって和解を拒否してしまうこともあります。子供が駄々をこねているのと同じ状態ですが、相手がこうなると非常に厄介です。

相手が損得計算をしているうちは、相手の出方も読みやすいのです。しかし、破れかぶれのヤケクソになった相手は、行動が読めません。

よく、闘いでは、相手の逃げ道を残しておけ、と言われるのは、こういうことなのです。

証拠を突きつけて、会社を屈服させた武勇伝はつい同僚に自慢したくなりますが、知的闘争者であるあなたは、自重するように心がけて下さい。

表向き、相手が勝ったことになっても構いません。「名よりも実を取る」のが知的闘争者というものです。