会社と対決する場合には、裁判に持ち込む前に和解で解決するのが最良、という趣旨の記事を以前に書きました。

有利な状況で膠着状態に持ち込み、和解するのが最良

これは、時間的にも経済的にも有利だと考えるからですが、その他にも理由があります。

裁判は、決して面白いものではないからです。むしろ、あなたの「会社と闘って打ちのめしてやる!」という意気込みに水を差す要素が満載だからです。

あなたが民事裁判を初めて経験する場合、「さぁ訴訟で決着をつけるぞ!」と意気込んで裁判所に出廷すると思います。

頭の中には、テレビドラマで見た、裁判官を挟んで丁々発止のやり取りを繰り広げる場面が浮かび、緊張感とともに、自分が公開の法廷で会社をやり込めるのだ、という期待感で溢れていることと思います。

でも、そういう想像をしていると、現実の民事裁判の場に立ったとき、あまりのギャップに呆然とするのは確実です。

 

実際の民事裁判は、審理の時間より日程調整の時間の方が長い

裁判が行われる日のことを、正確には「口頭弁論期日」と言います。読んで字のごとく、当事者が「口頭で」主張を述べ合うのが本来なのです。

しかし、実際には、この口頭弁論期日の前に予め自分の主張を書面にまとめて、裁判所と相手方に送付しておくルールになっています。そして当日は「書面のとおり陳述します」とだけ言えば、先に出した書面に書かれたことを全て裁判所で述べたことになる、という取り扱いがなされています。

こちらが提出した訴状が相手方に届いて裁判手続きが始まると、相手方は第1回口頭弁論期日の前に、訴状の内容に対する認否や反論をまとめた「答弁書」を提出することになります。

第1回の公判期日、あなたは勇んで裁判所に出かけるでしょうが、かんじんの相手は来ていない可能性も高いのです。

「口頭弁論」である以上、事前に書面を出していても出廷して「陳述します」とは言わなければならないのが原則ですが、1回目の期日だけは、事前に書面さえ出していれば、欠席してもそれを陳述したものとして扱って貰えることになっています(擬制陳述といいます)。ですから、被告の側は欠席するケースが多いです。

被告が出廷してこないなら、原告側も欠席したいところですが、ちょっと手続的な事情があり、実際問題として、訴訟を続けたいと思うなら、原告の側は出席しない訳にはいきません(この辺りは細かい手続きの問題になるので省略します)。

第1回口頭弁論期日に出廷すると、裁判官があなたに「訴状のとおり陳述しますね?」と問いかけがあります。あなたは「はい」と答えるだけです。相手方が出廷していれば「答弁書のとおり陳述しますね」「はい」となるはずですが、欠席している場合には裁判官が「被告から答弁書が出ておりますので陳述を擬制します」と言います。いずれにせよ、これで第1回は終了です。

第2回目以降は擬制陳述が出来ませんので(簡易裁判所での審理では可能)、被告側も出廷してきますが、それぞれの主張は「準備書面」と呼ばれる書面で事前に裁判所と相手方に送ることになっており、やはり裁判所でのやり取りは「書面のとおり陳述しますか」「はい」を双方が述べて終了です。

開廷してから1分程度で審理は終わってしまいます。

その後は、双方が手帳を取り出して、次回期日の相談となります。

「○月△日はどうですか」「あ、私はその日は差し支えます」「では、◇月▽日は?」「あ、その日は私の方がちょっと・・・」と、こっちの方がよほど時間がかかります。

ですから、実際の法廷では、テレビドラマのように原告被告双方が主張を述べあうような場面はなかなかありません。

口頭弁論期日に、当事者が「はい。陳述します」以外にあれこれ喋れるのは、証人尋問・当事者尋問のときぐらいでしょうか。

ただ、これも裁判の迅速化ということで、裁判所が「本当に必要」と判断した証人しか認められません。「気に喰わない上司を片っ端から証人として呼びつけ、糾弾してやろう」と思っていても、裁判所は必要最小限の証人しか認めてくれません。

(尚、口頭弁論とは別に「弁論準備手続」というものがあります。原告・被告・裁判官の三者が同じテーブルにつき、口頭弁論の準備のために争点や証拠の整理を行うものです。「陳述しますか」「はい」 だけで終わる口頭弁論よりもむしろ身のある中身になりますが、法廷ではなく小さな会議室のような部屋で非公開で行われますし、裁判官も法衣ではなく普通の背広を着て同じテーブルに座っているので、普通の人が持つ「裁判」のイメージとはかなりかけ離れていると思います)。

 

傍聴席は待合所

裁判は、原則として公開で行われることになっています。

しかし、民事裁判の場合(刑事裁判でも大部分は)、何かの事情でニュースになるなど、世間で大きな関心を持たれているごく少数のケースを別にすれば、まず傍聴人などおりません(先日のワタミの過労死裁判などは、このごく少数のケースにあたると思います)。

証人尋問などのとき以外、上記のように数分で審理が終わりますので、同じ時間帯にいくつもの裁判が詰め込まれていることも多い。そのため、傍聴席は自分の訴訟の順番を待つ人の待合席と化している場合も少なくありません。

ひとつの審理が終わると、「えーと、○○事件の方いらしてます?」ということになり、傍聴席から「はい」と返事して出ていくような状態です。

こんな裁判が、1ヶ月に1回位のペースでだらだら続きます。普通の人は、いい加減嫌になってきます。

原告と被告が双方とも馬鹿らしくなり、裁判所から帰る途中、喫茶店で示談したという話も実際にあります。

だったら、「裁判しても構わない」という姿勢は示しつつも、裁判外で決着をはかるのが賢いと思うのですが、如何でしょうか。

 

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