会社は、ノルマ達成やその他業務のために、職員を督励することがあります。また、職員に対する懲戒権も有しています。

もちろん、その懲戒権にはおのずと限度があり、濫用されてはならないのですが、どこまでが許されるのかの線引きは難しい。裁判の場でも、許容範囲とするかどうか、同じ事例でも裁判官によって判断が分かれる微妙なものもあります。

暴言と思われる発言があっても、前後関係や部下とのやりとり、ときにはその職員の日頃の勤務態度まで勘案して総合的に判断する必要があり、その判断結果は予測がつきづらいことも多いのです。

しかし、明らかな、あるいは重大な「違法行為の強要」がなされているときは、訳が違います。

部下に重大な違法行為を強要していたら、それがどんな前後関係や文脈の中で言われていたとしてもアウトでしょう。違法行為が正当化されるような前後関係だの話の流れだのは有り得ないからです。

M自動車で行われたリコール隠しなどが典型ですが、社会に大きな被害を与える可能性のある違法行為、その違法行為が発覚したら会社が大きなダメージを受けるような事実の隠ぺいを強要された場合も同様です。

このような場合に、あなたから「会社員としての、上司の命令に服従する義務と、社会の一構成員としての、遵法義務との間で悩み、結果心を病んだ」と言われたら、会社としても休職を認めざるを得ません。拒否してどこかに訴えられ、事態が公になったら、困るのは会社だからです。

 

 

「差別発言、その他明らかな人権侵害にあたる発言」も同じです。

特に、仕事と関係のない本人の出身校、出身地、容貌、身体的特徴、あるいは両親に対する侮辱などは、会社が持つ懲戒権の範囲を明らかに逸脱しています。これも、いかなる前後関係があったとしても、許されないというのが常識でしょう。表ざたになったら確実に会社の旗色が悪いことは、さすがに会社も分っています。

 

繰り返しになりますが、違法行為の命令や明らかな差別発言は、録音で証拠が確保できていれば、会社とわたりあう上でたいへん有効な武器となります。発言の前後の状況がどうだったとか、文脈がどうだったとかいうエクスキューズが通用しないからです。どんな前後関係が存在しても、明らかな違法行為の強要が正当だと評価される訳がありません。明らかな差別発言も同様です。理屈をどれだけ捏ねても、正当化のしようがないのです。

この状態であなたの休職の申し出を拒み、「休むなら辞めろ」などと言ってしまったら、あなたがキレて事実を公にするかもしれない、ということぐらい、さすがに経営者も分ります。「下手に拒んで変なところに相談に行かれるより、希望を容れて休ませた方がいい」ということになり、休職の申請はすんなり通ると思います。

 

尚、重大な法律違反の強要、社会に大きな被害を与える可能性のある事実の隠ぺい強要がが執拗に行われた場合などは、あなたの精神疾患は労災の認定を受けられる可能性があります。これについては、別の機会に稿を改めて述べることにします。

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