転職に関するアドバイスで、「自分が本当にしたい仕事は何かを突き詰め、その仕事に就くようにしなさい」というものがあります。

言い換えれば、「自分の天職を探しなさい」ということですね。

今日は、このことについて考えてみます。

「天職に就けて倖せだ」という人がどれだけいるんだろう

数年前になりますが、慈恵医大の大木隆生教授(血管外科)がNHKの「プロフェッショナルの流儀」に出演したのを見ました。

彼は、アメリカの大学で無給の助手から教授まで上り詰め、年収は1億円を超え、まさにアメリカンドリームを体現したのですが、その後母校の慈恵医大からの要請を受け、およそ1/10という大幅な減収にもかかわらず、これに応じて日本に戻りました。

(大木先生については、こちらのリンクを参考になさってください)
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/128927/
http://www.e-oishasan.net/site/ohki/

彼はカテーテルによる動脈瘤手術の第一人者で、年間の手術件数は800件に及びます。

1年のうち数日しか休まずに診療にあたっていて、外来診察日は全国から来院する患者のため、エレベーターの中でカロリーメイトを食べた後は、昼食も夕食も摂らずに深夜まで診察を続けます。

無理の連続に既に身体は悲鳴を上げており、麻酔医にブロック注射を打ってもらいながらひたすら診療と手術に取り組んでいるのですが、表情は明るく、目は常に爛々と輝いています。

彼は番組の中で、「外科医は自分にとって天職であり、もし100回生まれ変わったら100回外科医になりたい」と言い切りました。
これを聞いた住吉アナウンサーは、「えぇ-!」と驚いた声を出していましたが、実際にここまで言い切れる人はそうそういないでしょう。

思わず「えぇ-!」と声を出した住吉アナ自身、多分アナウンサーという仕事をしながら日々迷いや後悔があり、いろいろな思いを抱きながら仕事を続けているということがあるんでしょうね。

そして、僕らのほとんどがそうなんじゃないでしょうか。

例えば、都市銀行に勤める銀行員は収入も良く、社会的には一応エリートとして扱われていますが、試しに知り合いの銀行員に
「生まれ変わったらもう一度銀行員になりたいですか」
聞いてみましょう。

おそらく、
「とんでもない!」
という答えが返ってくるでしょう。

 浅田真央ですら、「生まれかわったらスケート以外の世界へいく」

フィギュアスケートの浅田真央選手の引退会見で、「生まれ変わったらもう一度スケート選手になるか?」との質問に対し、彼女は「スケートの道はいかない」と答えていました。

あの浅田真央にして、そうなのです。

もちろん、とことんやり切ったから悔いはない、という意味も含まれているのかも知れませんが、フィギュアスケート選手としてさらなる高みを目指すという答えにはならなかったのです……。

 

天職は「したいこと」、でも転職は「得意なこと」で

何かのきっかけで、使命感に突き動かされるように、したい仕事にひたすらのめり込む人生を送る人がいます。
例えば、ナイチンゲールは非常に裕福な家に生まれながら、当時は下層階級とされていた看護師業務に飛び込みました。

シュワイツァー博士も必要な費用を自身で稼ぎ出しながらアフリカ住民に無償で医療を施しました。
彼らにはそれが「どうしてもしたいこと」だった訳です。そして、彼らは天職を全うすることで、経済的な成功や世俗の楽しみとは違う次元での人生の喜びを得ていたことは間違いありません。

しかしながら、僕らのような多くの凡人は、現実の生活や俗世間のしがらみから逃れることは出来ません。
毎月〇〇円の家賃を払い、食費に○○円かかり、水道光熱費は幾ら、自動車のローンが幾らという現実の前では、とにかくこれらをクリアする収入を稼がなければならない訳です。

実際に自分が必要なお金を稼ぎ出せる手段が、自分の「したいこと 好きなこと」と一致している場合は、これほど恵まれたことはありませんが、実際には「好きなこと」がビジネスに馴染まず儲からないことだったり、下手すると持ち出しが生じることだったりします。

ですから、転職において、「絶対に好きな仕事・したい仕事をするべきだ」と窮屈に考えてしまうと、行き詰ってしまう惧れがあります。

転職においては、好き嫌いよりも「自分が得意なこと」「経験して身に付けていること」「即戦力として働けること」が何であるかを、まず考えてみたほうが良いかも知れません。

もちろん、いくら経験があっても、その仕事が「生理的に受け付けない」「正義感に反する」ようであれば、長続きしないでしょうから避けるべきです。

ですが、「生活費を稼ぐ手段としては受容できる」のであれば、選択範囲に入れてみていいのではないでしょうか。
何がなんでも「好きな仕事・したい仕事」と考えるのではなく、「自分の経験能力でできる仕事」であって、「嫌いではない仕事」ぐらいをターゲットに入れるようにすれば、ある程度視野が広がるはすです。

 

「すごく好きな仕事」でないからこそ「会社選び」が重要になる

そして、「好きなこと・やりたいこと」とは言い切れない「嫌いでない仕事」をする場合こそ、仕事の中身そのものより、就職する会社の体質や雰囲気のほうがよっぽど重要になります。

「やらずにいられないほど好きなこと」を仕事にしているのであれば、傍目には過酷に見えても、本人は何ともないのかも知れません。

しかし、「嫌いではない」程度ですと、その稼ぐ過程があまりに過酷な場合、長時間労働や休日出勤・サービス残業を強いられたり、パワハラに晒されたりするものであったら、とても耐えられるものではありません。

ですから、仕事の内容を選ぶ以上に、「どの会社を選ぶか」を大切にして下さい。
会社の内情は、入ってみなければなかなか分からないものではありますが、窺い知るためのヒントはこのサイトのあちこちにちりばめてありますので、ご参考にして頂ければ幸いです。

あなたの転職活動のご成功をお祈りします。