以前にも「アリさんマークの引越社」についての記事を書きました。

⇒ アリさんマークの「引越社」

 

平成28年2月9日、テレビ東京「ガイアの夜明け」でこの問題が取り上げられました。ご覧になった方も多いと思います。

 

会社が外部ユニオンに加入した従業員を、営業職から「シュレッダー係」に配転した後に懲戒解雇。

これは後に撤回されましたが、シュレッダー係のまま据え置かれ、未だに会社の攻撃は続いているというものです。

 

この「引越社」については、以前の記事でも、企業としての危機管理があまりにお粗末ではないか、と指摘しましたが、今回の放送を見て、その感を一層強くしました。

 

 

引越社の危機管理体制に対する疑問

当然、この規模の会社ですから顧問弁護士もおり、労使に紛争が起きた段階、少なくともこの労働者(以下『Xさん』とします)が外部のユニオンに加入した段階で顧問弁護士にも相談し、以後の対応について協議していると思います。

しかし、一体全体どのような対応方針を打ち合わせたのか、なぜこんなにXさん側に有利な状況を会社がわざわざ作るのか、そのあたりが全く理解できません。

 

放送では、シュレッダー係への配転を告げた上司が、「遅刻が理由ですか」と尋ねたXさんに対して、

「こらァ、オンドレェ! なんでもかんでも組合の名前出したらいける思うたらあかんど!」

と、恫喝している場面の録音が流れていました。

 

シュレッダー係への配転は、Xさんが外部のユニオンに加入し、このユニオンから団交の申し入れがあった後に行われています。

「組合の名前出したら・・・」という上司の恫喝からも、既に会社が組合加入を知った後での配転命令です。

時系列的に見ても、この配転は組合加入に対する意趣返しとして行われたものだと受け取るのが、普通の人の感覚だと思いますし、労組は当然に「不当配転」だと主張するでしょう。

これは、誰でも予測可能なことだと思います。

 

もし、僕が会社側の立場でXさんに対応するとしたら、配転を告げる上司には、「配転の告知と、理由についてのみ、感情を交えず淡々と説明すること」「相手から配転理由を尋ねられても、遅刻が原因とだけ答え、余計なことを言わないこと」を徹底しておくでしょう。

「○月○日付で、シュレッダー係を命じます」「これは、業務命令です」

「遅刻が複数回あり、お客様と直接対応する営業職としては不適と判断しました」

「人事権は会社にあります。適性を考えて異動を発令しました」

後は、Xさんから何を言われても 「会社の決定で」「会社の判断です」で通し、話を打ち切るでしょう。

 

外部ユニオンに加入して交渉してくる相手ですから、会話を録音している可能性も十分に考え、言質を取られないように細心の注意を払うのが、会社側のリスク管理としては普通だと思うのです。

それなのに、ヤクザのような恫喝を録音され、後日公開されるに至っては、いったいこの会社の経営層は何を考えているのか、と不思議です。

 

街宣で、副社長が「ワレ、コラ」と組合員を恫喝したシーンも、YOUTUBEに動画が掲載されて有名になりました。

このユニオンのこれまでの活動記録、ホームページを見ただけでも、いずれ街宣が行われるだろうこと、そして街宣の様子は録画されて公開されるだろうことは、誰にでも予測できることです。

僕が経営者なら、街宣に備えて、予め対応方法や対応者を決めておくでしょう。

街宣が来ても、基本無視するという方法もありますし、もし対応するのであれば、録画されていることを前提に、「極めて紳士的に」振る舞うことを意図的に行うようにするでしょう。

動画をいいように編集されないように、こちらも録音録画をするのは当然です。

 

街宣の責任者に名刺を渡し、「組合の活動は理解するが、騒音で業務の妨げになるので、ご配慮願えないか」ということを慇懃に申入れ、その場面を録画しておきます。

見る人に、「紳士的な会社 VS 暴力的・威圧的なユニオン」という印象を与える動画に仕上がるように工夫します。

 

街宣の現場に顧問弁護士を同道して、「組合の活動であっても、度を越すと威力業務妨害に該当することもあり得る」ということを弁護士から丁寧に言わせたり、警告文書を渡すのもひとつの方法でしょう。

ユニオンにも契約している弁護士はいますが、街宣の現場まで出てくることは少ないです。

ですから、こちらの弁護士の申し入れに対して、ユニオンサイドは街宣の現場責任者で判断せざるを得ません。

威力業務妨害罪で引っ掛けられる万一の可能性を考え、「誠実に対応しろよ!」などと言い捨てて、その日の街宣は終了するという判断をするかも知れません。

 

近隣の会社経営者に予め労働争議について(こちらの都合の良い内容で)説明しておき、「街宣でご迷惑がかかるようなら、遠慮なく警察に通報して下さい」と頼んでおく手もあります。

近隣の会社から「騒音で業務に支障が出ている」と通報され、警官が現場に赴いて街宣の責任者から事情を聴いたりすれば、街宣の対象としている会社からの苦情ではないだけに、ユニオンとしても「組合の権利だ」としてそのまま拡声器での街宣行為を強行することは、ちょっと難しくなります。

 

普通、この位のことは予め考えて準備しておくものだと思うのですが、この会社の副社長のやっていることはこれとは正反対です。

わざわざ会社が不利になるような行動をし、挑発に乗り、相手にしっかり動画を取られ、恫喝部分を強調した編集をされて公開されるなど、経営者でありながら、いったいどれだけ会社に損害を与えれば気が済むのでしょうか。

大手企業の経営者の対応としては、あまりにお粗末ですし、顧問弁護士は何を指導していたのか(指導しても言うことを聞かないのか?)、とにかく不思議で仕方がありません。

 

 

外部のユニオンに加入して闘うという選択について

 

一方で、今回のXさんについて見たときに、この闘い方を選んだことが果たして正解だったろうか、という疑念を禁じ得ないところがあります。

会社と闘う際に、外部ユニオンを利用するのはひとつの方法です。

組合であれば、街宣活動の中で会社を強く批判するアジ演説をすることも出来ますから、会社に対して強いプレッシャーをかけられるのも事実です。

 

ただ、会社を相手にした闘いに関して、僕の基本的な考え方は、「外部ユニオンの利用はよく考えてから」 や、「会社との闘いは目立たぬように地味にやる」 などの記事で書いた通りです。

 

事実、ユニオンを入れて会社の不当性を広く世間に知らしめることには成功しましたが、Xさん個人の問題を解決する、という視点で見ると、会社は依怙地になっていますし、裁判以外での解決は難しいところまで来ています。

 

もちろん、Xさんがユニオンに辿り着くまでにどのような経過があったのか分りませんし、この闘い方しか残されていなかったのかも知れません。

あるいは、

「自分の為だけに闘っているのではない」

「現役社員の立場で、この問題を広く知らしめ、引越社で働く同僚全てが、労働者として適正な扱いを受けられるようにしたい」

という、崇高な思いがあったのかも知れません。

 

ただ、僕のような利己主義者は、自分だけのために、個人で弁護士に依頼して闘うという選択肢はなかったのかな、会社から取れる金はなるべく多く取って、その上で転職をするという方向性は持てなかったのかな、とつい思ってしまいます。

こういう会社とは早く縁を切って、その後の生活に目を向けていく方が得策ではないか、という気持ちになってしまうのです。

みなさんは、どう思われたのでしょうか。
 自由な人生を手に入れる教科書
(電子書籍 無料ダウンロードサービス実施中!)